RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型業務の自動化によって業務効率を飛躍的に高めるツールとして、多くの企業で導入が進んでいます。
しかし、自動化が進む一方で見落とされがちなのが「セキュリティ対策」です。
特に、RPAロボットが社内システムやクラウドにアクセスする場合、通信の安全性を確保することが非常に重要になります。
そこで注目されるのが「VPN(仮想プライベートネットワーク)」の活用です。
この記事では、RPA運用におけるVPNの必要性や役割、導入メリット、注意点をわかりやすく解説します。
「社外からの自動処理は危険?」「情報漏えいのリスクは?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
RPAとは?
RPA(Robotic Process Automation)とは、定型的な業務をソフトウェアロボットが代行する仕組みです。
経理、総務、人事、営業、ITなどさまざまな部門で「データ入力」「ファイルの転送」「帳票出力」などの作業が自動化され、生産性向上が期待できます。
特に最近では、リモートワークやクラウド活用に伴い、社外の環境からRPAを実行する機会も増加しています。
RPAの主なメリット
- 作業時間を大幅に短縮できる
- 人為的ミスがなくなる
- 24時間365日動かせる
- 人材不足の解消にもつながる
使われている分野
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経理部門:請求書処理、経費精算
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人事部門:入社手続き、勤怠集計
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営業部門:顧客情報の更新、レポート作成
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IT部門:システム監視、定期バックアップ
RPA運用にVPNが必要なのか?
RPAが社内システムやクラウドへアクセスする際、通信経路が外部からの攻撃にさらされるリスクがあります。
このとき、VPNを併用することで「安全なトンネル」を構築し、通信を暗号化・保護することができます。
主な理由
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社内サーバーへの安全な接続:RPAがオンプレミスシステムにアクセスする場合、VPNを使えばリモートからでも安全に通信可能。
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外部通信の暗号化:VPNにより、RPAが送受信するデータが第三者に盗み見られるリスクを低減。
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アクセス管理の強化:VPNと組み合わせてIP制限や多要素認証を導入すれば、より厳格な運用が可能に。
活用シーン
利用シーン | VPNが有効な理由 |
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社外のPCからRPAを操作する場合 | 第三者による中間者攻撃のリスクを低減 |
RPAがクラウドサービスと連携する場合 | データの改ざんや漏えいを防止 |
社内システムへアクセスする自動化処理 | 社内ネットワークと同等のセキュリティを確保 |
夜間・休日にロボットが外部アクセスを行う | 自動処理中の不正アクセス防止 |
VPNとRPAを組み合わせる際の注意点
VPNとRPAを組み合わせて運用する際には、セキュリティ強化と同時に安定性や管理の面でも注意が必要です。
以下に、現場でよく起こる課題や失敗例も含めて、わかりやすく整理しました。
1. VPN接続の安定性を確保する
VPN接続が途中で切れると、RPAが処理を途中で失敗する可能性があります。
また、一部のRPAツールは、ネットワーク断をエラーとして認識しないこともあるため、気づかないうちにデータ不整合が起こる危険も。
対策
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安定した法人向けVPNサービスを選ぶ(例:SSL-VPN、IPSec-VPN)
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RPA処理前にVPN接続確認を行うチェック処理を組み込む
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VPNが切断された場合の再接続処理やリトライ処理をRPA内に実装
2. VPN認証の自動化と情報管理に注意
VPN接続にID・パスワードや証明書が必要な場合、RPAにそれを入力させる処理を組むことがあります。
しかし、認証情報をハードコーディングすると、情報漏えいリスクや保守性の低下につながります。
対策
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認証情報はセキュアな管理方法(例:資格情報ストア、パスワード金庫)を利用
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RPA側で定期的なパスワード更新に対応できるよう設計
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サービスアカウント専用のVPN接続設定を用意し、アクセス権限を最小限に設定
3. 同時接続数の制限に注意
多くのVPNサービスでは同時に接続できるデバイス数やユーザー数に制限があります。
複数のRPAボットが並行処理する場合、この制限に引っかかって接続できなくなるケースも。
対策
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VPNライセンスの同時接続数を事前に確認し、想定台数分のプランを契約
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ボットごとにVPN接続時間を分散させるなどのスケジューリング設計も有効
4. IP制限・ファイアウォール設定との整合性
VPNを介してアクセスする場合、接続先システムがVPN経由のIPをブロックしているとアクセスできません。
対策
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VPN接続時の固定IPを設定し、そのIPだけを許可するようにシステム側を設定
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ファイアウォールやゼロトラストのルールとRPAの動作ポート・通信先を事前に整理
5. 運用ログの監視と監査体制の構築
VPN経由で自動化された処理が実行されると、**「誰が・いつ・何をしたのか」**が不透明になりやすくなります。
これは、内部統制や監査に弱くなる要因になります。
対策
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RPA側・VPN側でそれぞれ接続/操作ログを取得・保管
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ログをSIEMや監査ツールと連携させて一元管理
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実行履歴に対して定期的なレビューを実施
まとめ
RPAは非常に便利な自動化ツールですが、ネットワーク経由で社内システムや機密情報にアクセスする以上、セキュリティ対策は必須です。
その中でもVPNは、RPAの通信経路を守るための重要な手段として、多くの企業で採用されています。
「RPAの導入は済んでいるが、通信はノーガード…」という方は、今すぐVPNの導入や見直しを検討してみましょう。
安全で効率的な自動化環境の構築が、企業の信頼性やリスク管理にもつながります。
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