小型PCとして人気の高いRaspberry Pi(ラズパイ)は、自宅サーバーやネットワーク機器としても活用されています。
そんなRaspberry PiにExpressVPNを導入すれば、セキュアな通信環境やVPNルーター化も可能になります。
しかし、「Raspberry PiはLinuxベースだけど、本当にExpressVPNに対応しているの?」「コマンドラインでどうやって接続するの?」と疑問を感じる方も多いでしょう。
この記事では、Raspberry PiにExpressVPNをインストールして使う方法を、初心者向けにステップバイステップで解説します。
あわせて、導入時の注意点やトラブル対処法も紹介しますので、Raspberry PiをVPNゲートウェイとして活用したい方はぜひご覧ください。
目次
ExpressVPNはRaspberry Piで使える?
ExpressVPNはRaspberry Piでも使用可能です。
ただし、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ではなく、Linuxのコマンドラインを使った操作が基本となります。
項目 | 内容 |
---|---|
対応OS | Raspberry Pi OS(Debianベース)など、Linux系OSで利用可 |
提供方法 | ExpressVPN公式の**Linux版CLI(コマンドラインインターフェース)**を使用 |
GUIでの利用 | 基本は非対応(コマンド操作が前提) |
対応プロトコル | Lightway、OpenVPN、IKEv2(バージョンや構成により制限あり) |
主な用途例
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VPNゲートウェイ(ルーター的な使い方)
→ Piを通して家庭内LAN全体の通信をVPN経由にできる -
VPNクライアント(個別デバイス用)
→ PiでのみVPN通信を行う(個人用ブラウジングやトレント対策に) -
IoT機器・サーバー用途のセキュリティ強化
→ Pi上のHome AssistantやNextcloudなどをVPN越しに運用する
ExpressVPNをRaspberry Piに導入する設定手順
ExpressVPNをRaspberry Piに導入するための設定手順を、初心者向けにわかりやすくステップ形式で解説したものです。
対象は Raspberry Pi OS(旧Raspbian)などのDebian系ディストリビューションです。
事前準備
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Raspberry Pi(推奨:モデル3B以上)
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Raspberry Pi OS(最新版にしておく)
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ExpressVPNの契約とログイン情報
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ターミナル操作の基礎知識(CLIのみ対応)
ステップ1:システムの更新
まず、Raspberry Piのパッケージを最新にします。
ステップ2:ExpressVPNのLinux版アプリをダウンロード
公式サイトから、Raspberry Pi向けのDebianパッケージ(.deb)を取得します。
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ExpressVPNのLinux版ダウンロードページにアクセス
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「Debian (64-bit)」を選び、URLまたは直接ダウンロードリンクをコピー
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Pi上で
wget
を使ってダウンロード:
※ URLのバージョン部分は公式サイトで確認してください。
ステップ3:ExpressVPNアプリをインストール
sudo apt –fix-broken install -y # 依存パッケージがある場合
ステップ4:ExpressVPNをアクティベート
契約後に発行されたアクティベーションコードを準備します(マイページに記載あり)。
→ コードを入力して認証。
ステップ5:VPN接続を開始
接続可能なVPNサーバーの一覧を表示:
たとえば日本のサーバーに接続するには:
ステップ6:自動接続の設定(オプション)
起動時に自動でVPN接続させたい場合:
ステップ7:キルスイッチ・DNS保護の有効化
expressvpn preferences set dns leak protection true
ExpressVPNをRaspberry Piに設定する際の注意点
以下は、ExpressVPNをRaspberry Piに設定・使用する際の注意点をわかりやすく整理した一覧です。
1. ExpressVPNのLinux版はCLIのみ(GUI非対応)
→ ターミナル操作が必須
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Raspberry Pi用のExpressVPNアプリはグラフィカル操作には未対応です。
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expressvpn connect
やexpressvpn preferences
などのコマンド入力で操作します。 -
Linuxの基本操作(
sudo
,dpkg
,apt
など)に慣れていないと難しく感じるかもしれません。
2. スプリットトンネリング(通信の一部のみVPN経由)は非対応
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Raspberry PiのLinux CLI版ExpressVPNは全通信をVPN経由に切り替える仕様です。
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「Raspberry Piからの特定アプリだけVPNを使いたい」といった制御はできません。
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代替策としてiptablesなどのルーティング制御を手動設定する方法があります(中〜上級者向け)。
3. IPv6は手動で無効化する必要がある(リーク対策)
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ExpressVPNのLinux版はIPv6のDNSリーク対策を自動では行いません。
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以下のように設定ファイルを編集し、IPv6を無効化しましょう:
ファイル末尾に以下を追加:
net.ipv6.conf.default.disable_ipv6 = 1
その後、反映:
4. 軽量モデル(Pi Zeroなど)では通信速度が大幅に低下する
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Raspberry Piは暗号処理に非力なCPUを搭載しており、モデル3以下ではVPN通信速度が極端に落ちることがあります。
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快適に使うにはPi 4以降、またはPi 3B+以上のモデルが推奨です。
5. ポートフォワーディングは使えない
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ExpressVPNはポート開放(ポートフォワーディング)を公式にサポートしていません。
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自宅サーバー用途(外部からSSH接続やWebアクセスなど)では不向きです。
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この用途にはポートフォワーディング対応のVPN(例:PIAなど)が必要です。
6. 「自動接続」の信頼性には注意(再起動後に未接続のまま起動することがある)
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expressvpn autoconnect true
に設定しても、起動時にネット接続が遅れてVPN接続が失敗するケースがあります。 -
systemd
を使った手動の自動接続スクリプト設定で改善できます(必要なら手順ご案内可能です)。
まとめ
ExpressVPNはRaspberry Piで問題なく使用できますが、CLI前提・設定知識が必要な中級者向けの構成です。
導入すれば、低コストで高いセキュリティを備えたVPN端末やVPNルーターの構築が可能になります。
sudo apt upgrade -y