インターネット接続やリモートワーク環境を構築するときに、**「DHCP」や「VPN」**といった用語を目にすることがあります。
どちらもネットワーク通信に欠かせない技術ですが、「この2つにはどんな関係があるのか?」「設定で注意すべき点は?」と疑問に思う人も多いでしょう。
本記事では、DHCPとVPNの仕組みや役割の違い、そして両者がどのように連携して通信を成立させているのかをわかりやすく解説します。
さらに固定IPアドレスとの違いやVPN利用時にDHCPを設定するポイント・トラブル対処法についても詳しく紹介。
「VPN接続時にIPアドレスが変わる理由を知りたい」「DHCPサーバーの設定方法を理解したい」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
DHCPとVPNの関係とは?
DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)とVPN(Virtual Private Network)は、それぞれネットワーク通信の中で異なる役割を持っていますが、VPNを利用する際にもDHCPの仕組みが重要な役割を果たしています。
VPNに接続した端末は、VPNサーバー上で「新しいネットワーク機器」として認識されます。
その際、VPNサーバーのDHCP機能が働き、接続した端末に対してVPN専用のIPアドレスを自動的に割り当てます。
この仮想IPアドレスによって、VPN接続中の通信が社内ネットワーク内などの安全な範囲で管理される仕組みになっています。
つまり、DHCPはVPNの裏側で「どの接続端末にどの仮想IPを与えるか」を制御しており、VPN通信の安定稼働に欠かせない存在なのです。
固定IPとの違い
DHCPによるIPアドレスは「動的(Dynamic)」であり、接続のたびに異なるIPが割り当てられるのが基本です。
これに対して「固定IP(Static IP)」は、常に同じIPアドレスを使う設定のことを指します。
VPN利用時に固定IPを使うと、社内システムへのアクセス制御やリモートデスクトップの管理が簡単になりますが、設定や運用コストが高くなります。
一方、DHCP方式は設定が簡単で自動管理が可能なため、個人利用や小規模ネットワークに向いています。
DHCPを使うVPNの設定方法
VPNでは、接続した端末ごとにIPアドレスを割り当てる必要があります。
このとき便利なのが、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)による自動割り当てです。
VPNサーバーがDHCP機能を使って接続端末にIPを配布することで、手動で設定を行わなくても通信が成立します。
ここでは、一般的なVPN環境でDHCPを使う設定方法を解説します。
1. VPNサーバー側のDHCP設定を有効にする
多くのVPNルーターやVPNソフトウェア(例:OpenVPN、L2TP、PPTPなど)には、DHCPサーバー機能が内蔵されています。
まずは、VPNの管理画面にアクセスし、DHCP機能が有効になっているか確認しましょう。
例)OpenVPNサーバーの設定例:
この設定を記述すると、VPNサーバーは10.8.0.2〜10.8.0.254の範囲でIPアドレスを自動割り当てします。
企業のVPNルーターの場合も管理画面に「DHCPサーバーを有効にする」または「VPNクライアントにIPを自動配布する」といった項目があります。
2. DHCPアドレス範囲(プール)を指定する
DHCPでどの範囲のIPを配布するかを指定します。
たとえば以下のような設定にします:
- 開始アドレス:10.8.0.10
- 終了アドレス:10.8.0.100
- サブネットマスク:255.255.255.0
この範囲内でVPN接続が行われた端末に順番にIPが配布される仕組みです。
範囲を狭くしすぎると接続台数に制限が出るため、利用人数に応じた設定が必要です。
3. DNSサーバー・ゲートウェイ情報を指定する
DHCPはIPアドレスだけでなく、DNSサーバー情報やデフォルトゲートウェイも同時に配布できます。
たとえば社内VPNであれば、社内DNSを指定することで、VPN接続時に内部システムの名前解決が可能になります。
例)
push “dhcp-option DOMAIN company.local”
このように設定すると、VPNに接続したクライアントは自動的に社内ネットワークのDNSを利用できます。
4. クライアント側の設定
VPNクライアントの設定では、IPを手動で入力する必要はありません。
「IPアドレスを自動取得する(DHCPを使用)」を選択すれば、VPNサーバーから自動的に情報が配布されます。
Windows、macOS、Android、iOSいずれの環境でも同様に設定できます。
5. 接続確認
VPN接続後、次のようにIPアドレスが割り当てられていれば、DHCPが正しく機能しています。
- Windowsの場合:「コマンドプロンプト」で ipconfig
- Macの場合:「ターミナル」で ifconfig
VPN専用のアダプタ(例:tun0, ppp0など)に10.8.x.xのIPが付与されていれば成功です。
6. 固定IPを混在させたい場合
一部の端末には常に同じVPN IPを割り当てたい場合、MACアドレスやユーザー名を指定して固定配布を設定できます。
OpenVPNの場合、client-config-dirを使って個別に設定ファイルを作成することでDHCPによる動的配布と固定IPの併用が可能です。
まとめ
DHCPとVPNは、それぞれ役割の異なるネットワーク技術ですが、VPN接続時のIPアドレス割り当てを自動で行ううえでDHCPは欠かせない存在です。
DHCPは端末に自動でIPアドレスを配布する仕組み、VPNはインターネット上に安全な仮想通信経路を作る技術。
この2つが組み合わさることで、VPN接続時にも安定したネットワーク通信とセキュリティの両立が実現します。
また、DHCPを使えばVPNの設定や管理が簡単になり、複数台の端末を自動的に管理できます。
一方で常に同じIPアドレスでアクセスしたい場合は、固定IPの設定を行うことで運用を最適化できます。
つまり、
- 柔軟で自動化された運用をしたいならDHCP方式
- セキュリティやアクセス制御を重視するなら固定IP方式
というように目的に応じて使い分けることがポイントです。
DHCPとVPNの仕組みを正しく理解して設定すれば、リモートワークや社内ネットワーク環境をより安全かつ効率的に運用できるでしょう。




