インターネットを使ったリモート接続や社内ネットワークの構築を検討するときに、よく登場するのが「閉域網」と「VPN」という2つの仕組みです。
どちらも「離れた拠点を安全につなぐ」ためのネットワーク技術ですが、通信経路の仕組み・セキュリティレベル・コストには大きな違いがあります。
「どちらが安全なの?」「自社にはどちらが向いているの?」と悩む方も多いでしょう。
この記事では、閉域網とVPNの基本的な仕組みの違いから、セキュリティ・運用コスト・利用シーン別の選び方までをわかりやすく解説します。
企業のネットワーク設計やテレワーク環境を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
閉域網とは
閉域網(へいいきもう)とは、インターネットを経由せずに特定の利用者だけが使える専用ネットワークのことです。
企業や組織の拠点間通信を安全に行うために構築されるネットワークで通信事業者(NTT・KDDI・ソフトバンクなど)の専用回線や閉域接続サービスを利用して構築されます。
閉域網の最大の特徴は、「外部インターネットから完全に隔離された通信環境」にあります。
一般的なインターネット回線とは異なり、通信経路が限定されているため、第三者による盗聴や不正アクセスのリスクが極めて低いのが大きなメリットです。
代表的な利用例
- 本社と支社間の社内システムを安全に接続
- 金融機関や官公庁など、高セキュリティが求められる業務通信
- クラウドサービス(AWS・Microsoft Azureなど)と社内ネットワークを閉域で接続
閉域網とVPNの違い
閉域網とVPNはいずれも「拠点間通信を安全に行うための仕組み」ですが、通信経路・セキュリティの確保方法・コスト・運用の柔軟性などに明確な違いがあります。
それぞれの特徴を理解しておくことで、自社の用途に最も合ったネットワークを選ぶことができます。
1. 通信経路の違い
閉域網は、通信事業者が提供する専用回線を使った完全に分離されたネットワークです。
インターネットを一切経由せず、特定のユーザーだけが利用できる「クローズドな通信経路」でデータをやり取りします。
一方VPNは、インターネット回線を利用して仮想的に専用ネットワークを構築する仕組みです。
通信内容を暗号化することで、あたかも専用線のように安全な通信を実現しています。
つまり、VPNは「インターネットを使うが、安全なトンネルを通す」仕組みと言えます。
2. セキュリティの違い
閉域網は物理的にも外部ネットワークから分離されており、不正アクセスや情報漏えいのリスクが極めて低いのが特徴です。
そのため、金融機関・自治体・医療機関など、高いセキュリティが求められる組織で多く採用されています。
VPNは、通信が暗号化されているとはいえ、あくまでインターネットを経由するため、設定ミスや脆弱な暗号化方式を使うと攻撃を受けるリスクが残ります。
ただし、最新のVPNプロトコル(IKEv2、OpenVPN、WireGuardなど)を正しく設定すれば、実用上は十分に安全なレベルの通信が可能です。
3. コストの違い
閉域網は専用回線を利用するため、初期費用・月額費用ともに高額です。
一方VPNは、既存のインターネット回線を利用するため、低コストで導入できるのが大きな利点です。
たとえば、全国の支社をつなぐ場合、閉域網では数十万円〜数百万円のコストがかかることもありますが、VPNであれば数千円程度から構築することが可能です。
4. 運用・拡張性の違い
閉域網は通信事業者の管理下で運用されるため、安定性が高く、通信品質も保証されます。
ただし、拠点の追加や構成変更には申請や工事が必要な場合があり、柔軟性は低めです。
VPNはソフトウェアやルーター設定で構築できるため、新しい拠点やリモートワーク環境を簡単に追加できる柔軟性があります。
5. 向いている利用シーンの違い
閉域網: セキュリティ・安定性を最優先する企業(金融機関、官公庁、大規模企業など)
VPN: コストを抑えながら安全なリモート接続を実現したい中小企業・個人事業主
まとめ
閉域網とVPNは、どちらも離れた拠点同士を安全に接続するためのネットワーク技術ですが、その仕組み・セキュリティ・コスト・柔軟性には明確な違いがあります。
閉域網は、通信事業者が提供する専用回線を使った完全に閉じたネットワークで高いセキュリティと安定性を確保できる一方、構築・運用コストが高く柔軟性は低めです。
一方VPNは、インターネット回線を利用して仮想的な専用ネットワークを構築する仕組みで暗号化技術によりセキュリティを確保しつつ、低コストで導入・拡張が可能です。
つまり、
- セキュリティと安定性を最優先する企業には「閉域網」
- コストや運用のしやすさを重視する企業には「VPN」
という選び方が基本となります。
自社のネットワーク規模・安全性・運用コストのバランスを考慮して最適な通信環境を構築していくことが重要です。





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