本社と支店、あるいは国内と海外の拠点など、離れた場所にあるオフィス同士を安全かつスムーズに通信させたいときに活躍するのが「拠点間VPN」です。
専用回線を使わず、インターネットを経由しても暗号化された安全な通信を実現できるため、多くの企業が導入を進めています。
この記事では、拠点間VPNの仕組みやメリット、一般的なVPNとの違い、導入時のポイントなどを初心者にもわかりやすく解説します。
「支店とデータを共有したい」「複数拠点のネットワークを統合したい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
拠点間VPNとは
拠点間VPN(Site-to-Site VPN)とは、地理的に離れた複数の拠点(例:本社と支社)を、インターネット上で安全に接続する仕組みです。
まるでひとつの社内ネットワークのように、ファイルやシステムを共有できるため、企業の多拠点展開には欠かせない技術です。
主な目的
-
本社と支店の間でファイルサーバーや業務システムを共有
-
海外拠点から日本本社のネットワークに安全にアクセス
-
クラウドとオンプレミスの拠点を統合したい場合にも有効
拠点間VPNの仕組み
拠点間VPN(Site-to-Site VPN)は、インターネット上に“仮想の専用回線”を作り、本社と支店など離れたオフィス同士を安全につなぐ仕組みです。
通信内容はすべて暗号化されて送受信されるため、盗聴や改ざんの心配がなく、インターネット回線でも専用線のような安全性を確保できます。
基本構成(ネットワーク構造)
-
各拠点に「VPNルーター」や「ファイアウォール機器」を設置
-
拠点間のルーター同士がVPN接続を確立し、常時通信が可能な状態に
-
社員は意識せず、社内LANと同じ感覚でシステムやサーバーにアクセスできる
具体的な仕組みのポイント
項目 | 内容 |
---|---|
VPNトンネル | 拠点と拠点の間に作られる暗号化された通信経路 |
IPsecなどのプロトコル | 通信の暗号化・認証を行うために使われる技術(例:IPsec、OpenVPN、WireGuard) |
ルーターやUTM機器 | 拠点同士をつなぐVPN機能を持つネットワーク機器(Yamaha、Cisco、FortiGateなど) |
常時接続(Auto VPN) | 一度設定すれば、自動でVPN接続が張られ続ける |
拠点間VPNの主なメリット
拠点間VPNの主なメリットは、次のとおりです。
1. 離れた拠点同士を安全につなげる(暗号化通信)
→ 本社と支店を1つのネットワークのように使える
拠点間VPNでは、インターネット回線を使いながらも通信内容がすべて暗号化されるため、第三者に盗み見られる心配がありません。
本社・支店・工場・海外拠点など、離れた拠点同士を1つの社内LANのように接続できるのが大きな利点です。
2. 常時接続で業務がスムーズ
→ 毎回のログインや設定が不要
拠点間VPNは、一度設定すればルーター同士が自動で接続を維持します。
社員が意識することなく、常に安定した接続環境で業務システムにアクセスできるため、テレワークや出張時と違って再接続の手間もありません。
3. 専用線よりも圧倒的に安価
→ 通信コストを大幅に削減できる
従来、拠点間接続には「専用線」が使われていましたが、コストが高く柔軟性も低いのが難点でした。
拠点間VPNはインターネット回線を活用するため、導入・運用コストを大幅に抑えることができます。
4. 拡張性に優れ、新しい拠点もすぐ追加可能
新しい営業所や海外拠点ができても、既存のネットワークにVPNルーターを追加すればすぐ接続できます。
これにより、ネットワーク構成の柔軟性とスピード感が格段に向上します。
5. 自社でネットワークを管理・制御できる
VPNの仕組みは自社のルーターやファイアウォールで制御できるため、セキュリティポリシーやアクセス制限も柔軟に設定可能。
クラウドサービスやゼロトラストと組み合わせることで、より高度なセキュリティ対策も可能です。
拠点間VPNと従来のVPNの違いとは?
両者は同じ「VPN」という言葉を使いますが、接続の対象や目的、仕組みが大きく異なります。
1. 用途と対象の違い
項目 | 拠点間VPN(Site-to-Site) | 従来のVPN(リモートアクセスVPN) |
---|---|---|
接続対象 | 本社と支店など「拠点と拠点」 | 自宅や外出先の「個人端末と社内」 |
主な利用者 | 拠点間のネットワーク機器(ルーター同士) | テレワーク中の社員のPCやスマホ |
主な目的 | 拠点ネットワークを常時接続・一体化 | 外部から一時的に社内へアクセス |
2. 接続方法と運用の違い
項目 | 拠点間VPN | リモートアクセスVPN |
---|---|---|
接続方法 | VPNルーターやファイアウォール間で常時接続 | ユーザーがPCやスマホで手動接続 |
接続のタイミング | 自動・常時接続 | 必要なときに手動で接続 |
管理の手間 | 一度設定すれば基本的に自動運用 | 利用者ごとの管理やサポートが必要 |
3. セキュリティと通信の違い
項目 | 拠点間VPN | リモートアクセスVPN |
---|---|---|
通信の安定性 | 高い(拠点間の専用ルーター経由) | 接続元の通信環境に依存(Wi-Fi、モバイル等) |
セキュリティ | 拠点単位で一括管理しやすい | 端末ごとにセキュリティ対策が必要 |
通信内容の暗号化 | あり(IPsecなど) | あり(SSL、L2TP/IPsecなど) |
4. 代表的な活用例
拠点間VPNが向いているケース | リモートアクセスVPNが向いているケース |
---|---|
・本社と支店の常時接続 ・海外拠点との連携 ・拠点内のサーバー共有 |
・テレワーク中の在宅勤務 ・出張先から社内にアクセス ・BYOD端末の利用時 |
まとめ
拠点間VPNは、企業の拠点をつなぐ「安全で効率的な通信インフラ」です。
ITの基盤として導入することで、情報共有の効率化やセキュリティ強化、通信コスト削減にもつながります。
▼(VPNトンネル:暗号化通信)
[ 支社LAN ] ──┘