企業や組織がクラウドとオンプレミスネットワークを安全につなぐために欠かせない存在となっているのが、Azure VPN Gatewayです。
Microsoft Azureの仮想ネットワーク(VNet)内に構築され、IPsec/IKEトンネルを使って暗号化された通信を実現する仮想ルーターの役割を担います。
しかし、「Azure VPN Gatewayって具体的に何?」「どんな種類があるの?」「どうやって使えばいいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、Azure VPN Gatewayの基本的な仕組みや種類や特徴の違い実際の使い方・導入手順
まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
これからAzure環境とオンプレミス環境の接続を検討している方、またはハイブリッドクラウド構成に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
Azure VPN Gatewayとは?
Azure VPN Gatewayとは、マイクロソフトが提供するクラウドサービス「Azure」上に構築できる、仮想ネットワーク(VNet)間やオンプレミスネットワークとの間で安全なVPN接続を実現するサービスです。
簡単に言うと、Azureクラウドと自社ネットワークをセキュアにつなぐための「VPNルーター」的な役割を担います。
Azure上に仮想マシン(VM)やデータベースを構築しても、インターネット経由で直接アクセスするのはセキュリティリスクが高いため、VPNトンネルを張って、安全な閉じた通信路を作りたい──
そんなときに使われるのが「Azure VPN Gateway」です。
種類
Azure VPN Gatewayには、大きく分けて2つの種類があります。
タイプ | 特徴 |
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ルートベースVPN | IPルート情報に基づきトラフィックを制御。柔軟な経路設定が可能で推奨される方式。 |
ポリシーベースVPN | セキュリティポリシー(トラフィック選別)に基づいて通信。古いタイプで新規利用は非推奨。 |
現在は基本的に、ルートベースVPNの利用が推奨されています。
柔軟な構成が可能で、複数接続やVNet間接続にも適しています。
できること
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オンプレミスとAzure間の安全な通信(サイト間VPN)
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リモートユーザーからAzureへの安全な接続(ポイント対サイトVPN)
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Azure仮想ネットワーク同士の接続(VNet間VPN)
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冗長構成・複数接続の管理(高可用性設計も可能)
つまり、クラウド環境を使いながらも、企業の内部ネットワークのような閉じた安全な環境を作ることができます。
Azure VPN Gatewayの仕組み
Azure VPN Gatewayは、Azure仮想ネットワーク(VNet)内に展開される「仮想アプライアンス(ソフトウェアベースのVPNルーター)」です。
このゲートウェイを利用して、オンプレミスネットワークやリモートユーザーとの間に安全なVPNトンネルを張り、暗号化された通信路を作る仕組みになっています。
全体の流れ
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Azure上にVPN Gatewayをデプロイ
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Azure仮想ネットワーク(VNet)に「ゲートウェイサブネット(専用のサブネット)」を作成
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そこにVPN Gatewayリソースを配置します。
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オンプレミスまたはリモート端末にVPNデバイス・ソフトウェアを用意
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物理ルーターやファイアウォール、またはパソコン・スマホ用VPNクライアントを設定します。
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IPsec/IKEトンネルを構築
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Azure VPN Gatewayとオンプレミス側デバイスの間でIPsec/IKEプロトコルを用いた暗号化トンネルを確立します。
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暗号化通信の開始
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一度トンネルが確立されると、両拠点間のデータは暗号化された安全な経路で通信されます。
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社内ネットワークからAzure上の仮想マシンやストレージに、インターネット経由で安全にアクセス可能になります。
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次は、通信経路イメージ図です。
※リモートユーザーの場合は「パソコンやスマホ → VPNクライアント → VPN Gateway」という形になります。
Azure VPN Gatewayの使い方・導入手順
Azure VPN Gatewayを使えば、Azure上に構築した仮想ネットワーク(VNet)と、オンプレミス環境やリモートユーザーを安全なVPN接続で結びつけることができます。
ここでは、Azure VPN Gatewayを導入して接続を確立するまでの基本手順を、初心者向けにわかりやすく解説します。
1. 仮想ネットワーク(VNet)の作成
まず、Azure上に仮想ネットワーク(VNet)を作成します。
これは、Azureリソース(仮想マシン、ストレージなど)を配置する仮想的なプライベートネットワークです。
【ポイント】
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適切なアドレス範囲(CIDR)を設定(例:10.1.0.0/16)
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サブネットを作成(この後「ゲートウェイサブネット」も必要)
2. ゲートウェイサブネットの作成
VPN Gatewayは、通常のサブネットとは別に**専用のサブネット「GatewaySubnet」**内に作成する必要があります。
【設定ポイント】
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サブネット名は必ず「GatewaySubnet」
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/27以上(例:10.1.255.0/27など)の十分なアドレス範囲を確保
これにより、Azure上でVPN Gatewayが適切に動作できるようになります。
3. VPN Gatewayリソースの作成
次に、仮想ネットワーク上にVPN Gatewayリソースを作成します。
【設定項目】
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Gatewayタイプ:VPN
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VPNタイプ:ルートベース(推奨)またはポリシーベース
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SKU(性能グレード):VpnGw1、VpnGw2など用途に応じて選択
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仮想ネットワークの選択:作成済みVNetを選ぶ
作成には30〜45分ほどかかることがあるため、時間に余裕をもって作業しましょう。
4. オンプレミス側VPNデバイス(またはクライアント)の準備
Azure側だけでなく、接続先(オンプレミスルーターやリモートPC)側の設定も必要です。
【主な設定内容】
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IPsec/IKEプロトコル設定(暗号化方式、認証方式など)
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接続先IPアドレス(Azure VPN GatewayのパブリックIP)登録
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共通事前共有キー(PSK)の設定
※Azure公式ドキュメントには、主要なVPNルーターごとの設定例(Cisco、Fortinet、MikroTikなど)も掲載されています。
5. 接続(Connection)の作成
Azure Portal上で、VPN Gatewayとオンプレミス(またはリモートクライアント)を結ぶ「接続(Connection)」設定を作成します。
【ポイント】
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接続タイプ:サイト対サイト(Site-to-Site)またはポイント対サイト(Point-to-Site)
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オンプレミス側のIPアドレス情報と事前共有キー(PSK)を登録
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必要に応じてBGP(ダイナミックルーティング)設定も追加可能
6. 接続確認・テスト
最後に、オンプレミス側デバイスやクライアントPCから、Azure上の仮想ネットワークリソース(VMなど)への
通信ができるかをテストします。
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VPNトンネルが正常に確立しているか?
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仮想マシンに対してPingやリモートデスクトップ接続できるか?
これらを確認して、無事にVPN経由通信ができれば設定完了です。
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
Azure VPN Gatewayとは | Azureとオンプレミスや他VNetを安全に接続するための仮想VPNルーター |
仕組み | Azure上にVPN Gatewayを設置し、IPsec/IKEトンネルで通信 |
種類 | ルートベースVPN(推奨)、ポリシーベースVPN(非推奨) |
主な用途 | ハイブリッドクラウド、リモートアクセス、ネットワーク統合 |
導入の流れ | VNet作成 → ゲートウェイ作成 → トンネル設定 |
結論:Azure VPN Gatewayは、Azureクラウドと外部ネットワークを安全につなぐために不可欠なサービスです。
特にハイブリッドクラウドやリモートアクセスを実現したい企業にとって、導入メリットは非常に大きいです。