AWS(Amazon Web Services)が提供するVPNサービスは、オンプレミス環境とクラウドを安全に接続できる便利なソリューションです。
しかし、「料金がわかりづらい」「月額いくらかかるの?」「使いすぎてコストが膨らむのでは…」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、AWS VPN(Site-to-Site VPN)の料金体系の基本から、実際にかかる費用のシミュレーション例、さらにはコストを抑えるためのポイントまで、わかりやすく解説します。
これからAWS VPNの導入を検討している企業担当者・エンジニアの方は、ぜひ参考にしてください。
AWS VPNとは?
AWS VPNは、Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウドとオンプレミス環境を安全に接続するための仮想プライベートネットワーク(VPN)サービスです。
具体的には、企業の自社ネットワーク(データセンターやオフィスのネットワーク)とAWS上のVPC(仮想プライベートクラウド)を、インターネットを介して暗号化された通信でつなぐことができます。
主な構成
AWS VPNは主に以下の2つのサービスで構成されています:
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AWS Site-to-Site VPN(拠点間VPN)
オンプレミスのネットワーク機器(ルーターやファイアウォール)とAWS VPCをIPSecトンネルで直接接続します。
→ 拠点間接続・常時接続向け -
AWS Client VPN(リモートアクセスVPN)
社員が自宅や外出先からAWS上のネットワークに安全にアクセスするためのVPN。
→ テレワークやモバイルアクセス向け
こんなときに便利
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AWS上のデータベースやEC2インスタンスに社内から安全に接続したい
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テレワーク環境から社内ネットワークにアクセスさせたい
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一時的にAWSとの接続を確保したいが、Direct Connectほどの投資は避けたい
AWS VPNの料金・費用の仕組み
AWS VPNの料金は、「接続料金(固定)」+「データ転送料金(従量課金)」の組み合わせで構成されています。
利用するVPNのタイプによって課金体系が異なるため、それぞれ個別に確認しておく必要があります。
1. Site-to-Site VPN(拠点間VPN)の料金体系
項目 | 説明 |
---|---|
VPN接続の基本料金 | 1VPN接続あたり 0.05USD/時(約3.6円) → 月約36ドル(約5,400円) |
データ転送料金 | AWSから外部へのデータ転送量に応じて課金(従量制) 例:1GBあたり約0.09USD〜(リージョンにより変動) |
VPNトンネルは2本 | 冗長化のため自動で2本作成され、両方に料金が発生 |
通信がなくてもトンネルを作成しているだけで料金がかかる点に注意
2. AWS Client VPN(リモートアクセスVPN)の料金体系
項目 | 説明 |
---|---|
接続エンドポイントの料金 | 0.10USD/時(約7.2円) → 月約72ドル/エンドポイント |
アクティブユーザー接続 | 同時接続ユーザー×0.05USD/時(約3.6円) → 1人×8時間×20営業日=約28.8ドル |
データ転送料金 | Site-to-Siteと同様、AWS外への通信に従量課金 |
実際のユーザー数よりも「同時接続数」が料金に影響します。
3. データ転送料金(共通)
AWSでは外向き通信(アウトバウンド)が課金対象となります。
リージョンや利用量により変動しますが、おおよその目安は以下の通りです:
転送量 | 料金(例:東京リージョン) |
---|---|
最初の1GB | 無料 |
1GB〜10TB/月まで | 約 0.09~0.12 USD / GB(地域により変動) |
AWS VPNの料金・費用は高い?
結論から言うと、AWS VPNはシンプルな使い方なら“そこそこリーズナブル”ですが、使い方によっては高くつく場合もあります。
料金は定額+従量課金で構成されており、特に使っていなくても接続を維持しているだけで課金が発生する点には注意が必要です。
【料金の目安】Site-to-Site VPNを1本使った場合
内訳 | 月額費用(概算) |
---|---|
VPN接続(0.05USD/時) | 約36ドル(約5,400円) |
データ転送50GB | 約4.5ドル(約650円) |
合計 | 約40〜50ドル(6,000〜7,000円)/月 |
→ VPNトンネルを張っているだけで月額5,000円以上かかるため、小規模用途では「高い」と感じるケースもあります。
高くなるケース
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Client VPNで同時接続ユーザーが多い
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大量のデータを外部に転送する(例:動画・バックアップ)
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複数リージョン・多拠点にVPNトンネルを張る構成
→ 使い方によって月額1万円超えも普通にあり得ます。
割安になるケース
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最小構成(1トンネル・小規模転送)
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一時的な接続や開発用途
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自社でDirect Connectを構築するほどではない小規模システム
→ オンプレ×クラウド連携の導入コストを抑えたい企業には良い選択肢。
AWS VPNと他社VPNサービスの比較
以下は「AWS VPNと他社VPNサービスの比較」について、料金・使いやすさ・導入目的などを軸にわかりやすく整理した比較解説です。
AWSのSite-to-Site VPN(拠点間接続)を中心に、他の代表的なVPN手段と比べています。
1. 比較対象のVPNサービス
サービス名 | 主な用途 |
---|---|
AWS Site-to-Site VPN | AWSクラウドと社内ネットワークの常時接続(拠点間VPN) |
AWS Client VPN | 社員のリモートアクセス(テレワークなど) |
他社クラウドVPN(例:Cato Cloud, NordLayerなど) | マルチクラウドや複数拠点・ユーザーの統合VPN環境に対応 |
2. 料金の比較(目安)
項目 | AWS Site-to-Site VPN | 他社VPNサービス(中堅クラス) |
---|---|---|
月額基本料金 | 約5,000〜10,000円/接続 | 約3,000〜15,000円/ユーザー数・拠点数により変動 |
データ転送料 | 別途従量課金(1GBあたり 約0.09USD〜) | 多くは無制限 or 高速上限あり |
初期費用・機器 | 不要(AWS上で完結) | サービスによる(専用ルータが必要な場合も) |
3. セキュリティ・安定性の比較
比較項目 | AWS VPN | 他社クラウドVPN |
---|---|---|
暗号化方式 | IPSec(Site-to-Site)、OpenVPN等 | WireGuard / SSL-VPN / 独自技術など多様 |
安定性 | インターネット品質依存(回線次第) | サービスや専用回線により安定性が高いことも |
可用性 | 自動冗長トンネルあり | プランによって可用性・冗長化あり |
4. 利便性・管理性の比較
比較項目 | AWS VPN | 他社クラウドVPN |
---|---|---|
設定のしやすさ | AWSコンソール操作+ネットワーク知識が必要 | GUI管理・ノーコードで構築できるサービスもあり |
導入スピード | 通常30分以内に構築可能 | サービスにより即日利用も可能 |
ユーザー管理 | AWS IAMまたは外部連携が必要 | アカウントベースで簡易に管理可能なことが多い |
AWS VPNのコストを抑える方法
以下は、AWS VPNのコストを抑える方法をわかりやすくまとめた解説です。
特にSite-to-Site VPNやClient VPNを利用する際、知らないと無駄に料金がかかることもあるため、設計段階での工夫が重要です。
1. 不要なVPN接続は削除する
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AWS VPN(特に Site-to-Site VPN)は、接続していなくても“存在しているだけで”料金が発生します。
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使わないトンネルが残っている場合、必ず削除しておきましょう。
例:0.05 USD/時 × 24時間 × 30日 ≒ 約36ドル(約5,400円/月)
→ 使ってない接続が1本あるだけで、年間4万円以上の無駄に。
2. 必要最小限の接続数に絞る
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同一の拠点からAWSに複数のVPN接続を張っている場合、トラフィックや可用性を精査して統合できないか検討。
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Site-to-Site VPNは1接続あたり課金なので、必要数だけにとどめるのが基本。
3. データ転送量を最適化する
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AWSでは、インターネット経由のアウトバウンド(送信)データが従量課金されます。
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頻繁な同期・大量ファイル転送などがある場合:
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圧縮を導入する
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S3 Transfer AccelerationやAWS Direct Connectとの併用も検討
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AWS内サービス間通信はVPN外に出さない構成にする
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4. Client VPNは「同時接続ユーザー数」で設計する
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AWS Client VPNは「ユーザー数」ではなく「同時接続数 × 接続時間」で課金されます。
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全社員分契約するのではなく、同時に接続する最大人数を想定して設計すれば、かなりコストを抑えられます。
5. スケジューリングでVPNの利用時間を制御
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AWSのVPNは、常に有効になっていると24時間課金対象になります。
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夜間や休日に不要な場合は、CloudWatch Events + Lambdaなどを使って、自動でオン・オフ管理を実装するとコスト効率が上がります。
6. 定期的な料金モニタリングを行う
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AWS Cost ExplorerやCloudWatchを活用して、どの接続・どのトンネルがコストを生んでいるか可視化しましょう。
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無駄な転送や接続がないかを定期的にチェック → その都度調整
まとめ
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少人数・短時間の利用ならコストは抑えられる
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常時接続・多拠点構成になるとコストは急上昇
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構成・運用を工夫すればコスト最適化は十分可能
AWS VPNは、AWS環境との親和性やセキュリティの面で非常に優秀ですが、使い方を誤ると「意外と高い」と感じることも多いサービスです。
導入前には、自社のユースケースや接続パターンに応じたコストシミュレーションと最適化設計が重要です。
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